2014年2月17日、北陸電力エネルギー科学館「ワンダーラボ」より、サイエンスプロデューサー戸田一郎先生にお越しいただき、物理の特別授業をして頂きました。

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戸田先生はかつては富山第一高校に勤務され、数多くの実験実践と、情熱的な授業を展開されてこられた方です。
特に放射線に関しては造詣が深く(参考:富士山頂でミューオンを観察しよう)、独自に工夫改良を重ねられた霧箱は「戸田式霧箱」として広く知られています。

今回のテーマは、まさにその「放射線」です。

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はじめに「はかるくん」を使って物理室の線量を測定。0.08~0.11マイクロシーベルト毎時を計測。これが、危険かどうかということです。戸田先生曰く「その場所が、あるいはその物質が安全であるかどうかを自分で判断できる力を身につけることも、理科を学ぶ目的のひとつ」なのです。

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戸田先生の指導のもと、年間線量を計算します。
0.10(マイクロシーベルト毎時) × 24(時間) × 365(日) = 876 マイクロシーベルト毎年
つまり、0.876ミリシーベルト毎年です。すなわち、

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安全なのです。100ミリシーベルトまでは一回の放射線被曝(放射線を浴びること)であれ、ある期間に少しずつ被爆した総量であれ、どちらも「放射線による健康被害」と断定する症状は見られないそうです。
また、そうしたデータには、原子爆弾投下後の広島と長崎における追跡調査の結果が大きく反映されているとのことでした。
さらに、「はかるくん」の実験では、放射線による健康被害を防ぐためには、3つの要素が重要、という事を学びました。
…何でしたっけ?

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「距離」「遮蔽」「時間」ですね。前半部分のポイントは、「放射線ゼロ」はあり得ないということです。

消費者にとってのわかりやすさが追求される中、飲料メーカーの認識は「offでは売れない、ゼロでないと」なんだそうです。プリン体50%offでは売れない、でも、プリン体ゼロなら売れる。と。結局消費者に言わせれば、「プリン体ってなんなのかよく分からないけど、怖い。」ということなんですね。
ゼロにできない放射線。だからこそ、正しい知識で、理に適った判断ができることが大切だと感じます。

その後、霧箱の製作をしました。冷却にはドライアイスを使うタイプですね。LEDの懐中電灯を灯し、塩ビパイプを走らせると…

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見えました。放射線の飛跡が雲のように浮かび上がります。(ちなみに写真はラドンガスを入れたものです。短い半減期によるV字の飛跡が見られます。)

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そして、戸田式霧箱の登場です。線源を入れない状態でも、自然放射線をはっきりと観察することができます。ずっと見ていても飽きないくらい、感動的です。

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この完成度に至るまでには、幾多の試行錯誤があったことでしょう。戸田先生の科学に対する姿勢を形にしたような作品だと感じます。

授業では、様々なサンプルを中に入れてみました。ラジウム線源を入れると…

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放射状の飛跡がみられます。戸田先生曰く、「コンプトン散乱が見える」と。
「コンプトン散乱って何?」って???いずれまた、勉強しましょう。

授業の最後には、放射線研究の草創期のエピソードに触れる実験を披露して頂きました。

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鉱物から出る「未知の光」によってフィルムが感光する事を観察する実験でした。フィルム-鍵-鉱物を重ね合わせて数日間置いたあとのフィルムには…

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鍵の形がはっきりと写っていました。黒い部分が感光した訳ですね。

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講義を通して、放射線の印象が、少し変わったのではないでしょうか。「ポケットから手を出し、背筋を伸ばし、私の目を見なさい」と言われた最後の号令とあわせて、忘れないでください。

熱意あふれる、あっという間の2時間でした。戸田先生、どうもありがとうございました。